「情熱」ってなんだったんだ?

大阪・池田市にあるくれは音楽堂で昨日開催した「情熱-PASSION-」の公演は、満席のお客さまにお越しいただき、熱気の中終演した。
わたしたち【クレモナ・トリオ】と、太鼓集団『疾風』さん、表現集団『伊邪那』さん、ジャズピアニストのロン・ハドリーさん、クラリネット奏者のリアム・ホックリーさんの総勢16名で2時間近くをあっという間に駆け抜けた。

『ファウスト』を主題に身体表現をされたのだが、幼稚園レベルの感性しかないわたしにはさっぱり理解が出来ず、お客さまは一体何を見るのだろう、と疑問もあった。
「愛・快楽・青春」。スマホやテレビのない時代の悦びというのは非常にダイレクトで、青臭く、血なまぐさい。これをたった5行の筋書きだけで理解しろ、感じろ、というのは非常に難しいことではないか。しかも、相手はなんといっても、「ピアソラが理解できない音楽だ」と平気でNOを出せる池田の地の人たちである。
わたしたちはここまで来るのにめちゃくちゃ説明したし、受け容れてもらうために何でもやった。
なんなら演技の当の本人たちもきちんと説明できないのではないか、と思うくらいであった。筋書きを作っているはずなのに、とりとめがない。短歌集を読んでいるような気持になった。
即興や現代演劇って、よほど自分の中で理解がないと、人には伝わらない。120%理解して表現しても60%も伝わらないんだと思う。
あまりにも「その場しのぎ」でしかなく、打ち合わせや練習も意味をほとんど持たない部分もあった。

ここで監督かじくん の名言をひとつ。

「人に理解できる説明が出来ない人は 人に感動を与える表現なんてできません」

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クレモナでは決してやらない「楽譜のない」音楽と、「楽譜を作り込んだ」音楽を織り交ぜてステージに臨んだが、特に「楽譜のない」即興的な音楽については、「こんなんで拍手をもらってもいいんだろうか」という自分の中での疑問をぬぐうことが出来ないまま終わってしまったのが非常に心痛むことであった。
わたしが到底理解に達することのできない現代音楽にも楽譜があるのに。

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それでも、『疾風』さんの演奏への情熱は会場に蔓延した。彼らの太鼓は例外なくアツい。思いっきり叩くこと、そして思いっきりお客さまを喜ばせることを彼らは知っている。とても気持ちのいい人たちで、真摯だ。リハで「もう疾風さん本気出してるわ」とフルートゆきとホルンあやめに耳打ちしていたのだが、リハ終わりに疾風の南さんが「本番は本気出します」と言ったのには驚いた。

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そして本番は、くれは音楽堂下手の覗き窓がびりびりびりと言うほどの演奏となり、あやめのホルンの管体を振動させ、謎のぽこぽこという音がした、らしい。

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お客さまは『疾風』さんの出番に「待ってました!」と大歓声を上げ、南さんとクレモナの『リベルタンゴ』もヒートアップして、わたしも久しぶりに殴るような打鍵をした。ここにはたしかに情熱があったと思う。久しぶりにピアノを演奏して息切れがした。

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「情熱」というのはある程度演者とお客さまの間に「理解」がある、もしくは、突き抜けた圧倒的なパフォーマンスがないと、生まれない。と思った。

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今回もう一つ感じたことは、あまりにも日本人は欧米人に対してコンプレックスがありすぎることである。
「白人さん」というだけで「凄いんちゃうの」と色んな人に言われた。(うちの監督はそれに対して「ただの外人です」と切り返していた。)
演者の打ち合わせ中でも、ピアニストの意見が絶対になりかけたり、なんならリハーサルでプログラムを変えようか、と言い出したり(全力で断った。)、めちゃくちゃだった。
たぶん「外国人だからすごい」というステージの中でしか商売をしてこなかったんだろうなと思った。
それにへいこらそうかもしれない、そうですよねという態度で臨んだ演者もいた、なんなら同じことを言っても大丈夫だと思ったのか前日に一曲なくしたいとさえ言ってこられた。
絶対に何か間違ってる。楽譜のある音楽は勉強してこないし、打ち合わせの内容は飛んでいくし、アドリブソロの尺はどんどん伸びるし。
だって、ぜんぜん弾けてないし吹けてないやん。
というのは、ここまで読んでくださった方にだけ伝えたい小さな愚痴である。

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それでもお客さんが「良かったわ」と言ったのは「太鼓と、ピアノとクラリネット」だった。こうなるとわたしたちクレモナは残念ながらステージの上では感動を生めなかったのかも知れない。非常に残念で、敗北感と言うか、情けない気持ちになるわけだ。

段取り重視、楽譜が一番モノを言う、クレモナのスタイルとは違った本番となった。
勉強になった、といえばそうかもしれない。何も学びがなかったと言っても、そうかもしれない。

それでも『リベルタンゴ』のあとのあの熱狂はたしかにこの背中で感じたし、受けた拍手もとても熱いものだったと思うんだけどな。

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