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ブーレーズの音響づくりを参考に

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

 ようやくシーズンが始まったクレモナですが、次回は服部緑地野外音楽堂でのコンサートになります。野外のコンサートを単独の自主公演をするというのは、それほど馴染みがありません。特にクラシック音楽の場合、外で演奏しっぱなしというのは過酷な状況だとも言えます。

2019年の服部緑地野外音楽堂公演より

指揮者「ブーレーズ」の作る音響を意識して

 野外の劇場で全ての席のお客様にしっかりと音を届けるために、私たちは最新の注意を払って音響を考えます。(この作業がめちゃくちゃ楽しいのですが・・・)

 音のバランスを私が考えるときに参考にしているのが、ブーレーズという指揮者です。彼は作曲もして教育者でもあり指揮者でもあった人ですが、何より素晴らしいのはオーケストラの全ての音をバランスよく聞こえさせるすごい音響のミキサーみたいな人だったみたいです。

 ブーレーズの言葉は多く日本語になっているので、クラシック音楽の学習者にはぜひ触れてもらいたいし、彼の演奏の「火の鳥」は多くの録音がありますが、シカゴ交響楽団との演奏は非常に参考になります。

 オーケストラなんかでもそうですが、ある演奏者の音が聞こえなかった場合、どうしてもバランス取るために全体のボリュームを整えるじゃないですか。もちろんその手法は間違いではないのですが、もし他の手段が使えるとしたら、必ずしも全体のボリュームを下げる必要はなくなります。

 そのあたりのミックス作業がブーレーズは非常に素晴らしい。長年シカゴ響のシェフをしていただけではなく、あの伝説のテュービストのジェイコブスをはじめ錚々たるメンバーがいて、しかも金管はおそらく世界最強のサウンドが自慢のオケです。そんな怪物がたくさんいるオーケストラのバランスをブーレーズが整える事ができたのも、独特の聴覚とセンスがあったというのは容易く想像する事ができます。

音のバランスの整え方

 では実際、どのようにバランスを整えるのかと言うと、客席での音の響きを調整すると言う作業も大切なのですが、何よりもオーケストラな中で響いている音(いわゆる中音)が大切になると私は考えています。

 初めてのホールでもいつもと同じように響かせるためには、いつもと同じ音で聞こえるように適切に演奏者を配置しなければいけません。いわゆる”立ち位置”が重要になると言う事です。

 この時に、演奏者同士が見える場所に座ると言う事が大切で、前回も言いましたが”聴くことは見ることである”と言うことになります。知らず知らずに誰かが自分の音を普段より強く演奏したら、それだけでバランスは崩れてしまいます。

 演奏者自身も気がつかないレベルで、音が大きくなってしまうことは、生演奏をしている私たちにとっては、日常的に起こり得ることであります。「〇〇の音が聞こえ難い」と言ったような現象です。その時に、しっかりとその演奏者の事が見ることができると状況は大きく違ってきます。特に弦楽器と管楽器の間でそう言った現象が起こります。
 そう言った音楽的なバランスをとる作業が音楽監督にとって大切になる仕事ですが、私の場合、ブーレーズの演奏を手本にする事が多々あります。

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