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「悪魔のロマンス」のこと

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

 日曜日は本番が延期になり、公開練習となりました。この日は、「悪魔のロマンス」を中心に細部を見つめる練習となりました。いつでも、いつまでも細部を徹底的に見つめていくのが練習の第一歩だと私は考えていて、この日も音楽全体を俯瞰して細部に拘る練習となりました。

 この音楽全体を俯瞰するというと、作品ごとだと思われるかもしれませんが、それでは不十分で、コンサート全体を考えて、一つ一つの楽曲と向き合うのが大切だと私は考えております。

 つまり、今回のコンサートではメインの楽曲の最終楽章である「悪魔をやっつろ」を見据えて直前の「悪魔のロマンス」を作り上げなければいけません。もう少し具体的にいますと、どんだけロマンスが甘く切なく美しく歌い上げようとも、最後にはやっつけられるということを暗示しながらクリエーションするということです。

 なんだか、儚い気持ちになってしまいます。

 でも、クレモナでは儚さだけで音楽を終わらせることはありません。さらに、ロマンスについてどのように考えているのかと人に話せるほど、私には経験値があるとは思っていません。(残念ながら・・・)

 だったらどうするのか?

 という訳で今回、クレモナでは「悪魔のロマンス」をたっぷりとドロドロとした表現にはせずに、あっさりと爽やかなロマンスに仕上げることにいたしました。これって、意外に難しいことなんです。 オーケストラでも、いわゆる見せ場みたいな箇所では、その旋律の担当者は普段以上に張り切って演奏したりするものです。もちろん、ソロで演奏するピアニストでも同様です。お客さまも、この曲の金管楽器のガッツーんとした演奏を期待して座っています。

 でも、それって予定調和の押し付けがましいワンパターンな演奏だと感じてしまうのは、私だけではないと思うんです。なので、今回のロマンスはこれでもかという表現は一切禁止して、さらりと演奏します。

 そうなるとお客さまは、消化不十分になってしまうのではという初歩的なお声が聞こえてきそうですが、それで良いと思っています。お腹いっぱいになるロマンスは、どうぞ他所で聞いてください。

 ついでに、テンポも早くして演奏します。どこまでもピュアで、繊細なロマンスをお楽しんでもらいたいし、最後にはやっつけられる儚さを表出したいと考えております。

 というわけで、定期公演で演奏する「悪魔のロマンス」、めっちゃいい感じに仕上がりそうです。この作品、うっとりと美しさを堪能していただければ幸いです。

2022.02.14 監督かじくん

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