サックスみーこが欠席して、久しぶりのトリオでの練習だった。
フルート、ホルン、ファゴットという組み合わせの練習では、徹底的に細部にこだわってレッスンすることになっている。
よく、「ひとつひとつの音に囚われすぎず、大きな流れを感じて演奏するように」という指摘をされる先生もいるが、恐らく自分で楽譜を書いたことのない先生の意見だと思うし、この注意はあまり感心しない。
作曲家にしても、編曲家にしても、ひとつひとつの音に意味を持たせて、膨大な時間をかけて作り上げている。そして、ひとつひとつの音が積み重なって作品はできているのだから、その最小単位のパーツをいい加減にして、素晴らしい作品ができるほど、クラシック音楽は甘いものではない。
個人個人のボイシングに対する理解が演奏を変える。
こう言ってしまうと、「きれいに纏めているのに、音楽が動かない」という初歩的な感想を言われる方もおられる。大歓迎。
それは、フレーズ感とボイシングが身に付いていないからだけのこと。(もしくは、聞く人がグルーヴを理解していないだけ)
特に練習時に人が少なくなればなるほど、ボイシングを理解していないと、迷子になってしまう。当然、最も良い響きが出るように、配置されている楽譜を演奏するということが前提になるのだけど、和声ごとに音が大きく動く場面と、最小の距離しか動かない場面では、演奏の仕方は大きく変わってくる。
コードプロジェクションの中で大きく動く音(高低差の激しい音)の場合、印象が大きく変わる。この時にどの音に頂点があるのか見極めるのが、アナリーゼになり、この話はまた別の機会にするとして、和声の持つキャラクターや音色を理解していれば、自分の果たす役割がすぐに見えてくる。
一方で、和声が変化しても最小限の音しか動いていないと、その変化は前述と比べてさりげなく感じることができる。
この辺りの仕組みを理解する時に、クラシック音楽ではボイシングとして扱うことになっている。特に一番上の音「トップノート」はフルートが担当していることが多く、ベースと構成音(内声)をファゴットとホルンが担当しているので、このトリオの練習では、細部のボイシングについて考えることが理想的な練習となる。
さらにクレモナの場合、フルートの音を残したまま、進行が変化することが多々あるけど、「ソプラノ・ペダルポイント」と言って、クレモナらしい印象的な響きは、この辺りが味噌になっていることが多い。
また、サックスが頂点にくる時に、トップノートだけを動かしたりもするけど、楽器が持っている運動性とキャラクターが大切なポイントになり、ここでもボイシングを理解しているとスムーズに演奏が進む。
つまり、トリオの練習では、メンバーが理解していないと思われるボイシングについて練習することが多い。この夏はしっかりとボイシングについて練習を進めて、さらに進化した演奏を皆さまにお届けるのが目標でもある。
ピアソラの作品は音楽が手に馴染む。
さらに、ピアソラの作品は、もともと、ピアノで作曲されたものなので、コードフォームがしっかりとしていることが多い。簡単に言うと、「音楽が手に馴染む」という感覚なんだけど、コードフォームがしっかりとしている、つまり構成がしっかりとしているので、多様な変化をしても、ピアソラの音楽は成立する。
さらに、多くのアレンジが可能になるし、バンドネオンがなくてもタンゴとして楽しめる。だから、今日までピアソラの作品は生き残ったとも言える。
楽器を始めたばかりの初心者の方から、クレモナのようなプロフェショナルの演奏家まで、それぞれのレベルで楽しめることができるのが、ピアソラの最大の魅力でもある。
もっと多くの人にクレモナの演奏を楽しんでもらえるよう、これからどんどんと練習に力が入ってくる。シーズンの開幕まで1月を切ったので、そろそろ仕上げの段階となる。次回の練習では、「ルートレスコード」のボイシングについて考えていきたい。
監督かじくん
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