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感性を身につける必要性について

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

一週間空いての全体の練習でした。定期公演に向けてしっかりと取り組んでいます。ここ最近の練習では、伝えるということを大きなテーマにしております。本日もその続きをご説明いたします。

音楽の現場において「感性」と言う言葉が使われています。音楽についてあれこれと言っている評論家であっても「感性で演奏する」(もしくは「感性で聴く」)的な事を述べてたりもしますが、「感性で演奏する(聴く)」と言うのは、そんなに容易いことではありません。その「感性」が羽ばたくよう訓練が必要です。本日は、そのあたりのお話をします。

自分が心から感じている感覚なのか、それとも、経験から生まれる感覚なのか

まず、感じるままに演奏(聴いて)しているつもりでも、周囲の環境や、これまでの経験に影響されて「そうなるように仕向けられている」ことがしばしばあります。

本当に自分は、心からそう感じているのか疑問になることも多々あります。

さらに言うと、音楽体験は、生理的な反応です。食べ物の好き嫌いや、異性の好みのタイプと同じようなもので、造形芸術のように客観的な認知の対象でもなく、文学のように概念を情報伝達することもありません。

だから、音楽体験というのはどこまで行っても、「なんとなく」とか「〜のような気がする」という領域を超えないようにも思ってしまいます。

そういう意味において、音楽体験というのは、ワインやコーヒーのテイスティングに近いところがあります。「ナッツ系の香り」とか、「カシスのような〜」と表現することがありますが、それを聞いても「本当かなぁ」って疑ってしまうことってありませんか。おそらく同じような思いを音楽に対して抱いている人が多いように思います。

これでは、いつまで経っても、自分と他者との間の身体的な波長が一致する事はありません。

密集から開離へ

という感じで、この日の練習は、音が次第に「開放」になっていく様子を表現することに注力しました。この「開放」というのは、音程(それぞれの音の幅)が密集から開離していくからで、音の幅が広がった分「開放」されるという事を考えました。

「楽譜がそうなっているのなら、そのように演奏すれば良いじゃん」というご意見を頂戴するかもしれませんが、それでは全く不十分です。それこそ、分厚い上着を一枚ずつ脱いでいき、徐々に解放されるような演奏をすれば簡単にできることですが、キャンディーズじゃないんだから、そんな単純なことではないようにも思ったりもします。

楽譜通りに演奏すること=花相撲?

もちろん、専門的に話をすることも可能です。

例えば、「ディミニッシュ・セブンから遠隔調に移調する時に開放感を抱いて演奏して」と言えば、かなり具体的なイメージが湧きますが、移調に対しての表面的な指示となり、音楽的な解釈に直結しません。

これはよくある現象ですが、クラシック音楽の場合、楽譜通り正確に演奏するのが一番大切だと叩き込まれた結果、筋書き通りの予定調和になる事があります。

楽譜に対して真摯に向き合うと言えば、崇高な気持ちになるのかもしれませんが、私に言わせれば「花相撲」を見ているようなもので、手抜きもいいところ。

もちろん、「それがクラシック音楽だ」と言って仕舞えばそれまでなんですが、これからの時代に生演奏をするという事は、それだけでは何の価値もなくなるように思ったりもしています。

演奏における正しさとは

恐らく、多くの演奏家が同じような危機感を抱いているとは思うのですが、具体的に何をすれば正しいのか、または何をしたらダメなのかの判断が付かないのが今の時代の難しさなのかもしれません。

ということで、この日は、バスティーユの牢獄から外の様子を覗き込む「仮面の男」についての説明を共有。もちろん、今シーズンの大切な「静寂」というテーマにしながらの音楽作りです。

たとえ、原作を読んでいなくても、想像するシーンが違っても構いません。この作品で描かれている「解放」というのが、どういったものなのか共有できれば、それだけで十分です。

クレモナの音楽作りの現場では、こう言った特定の身体感覚を呼び起こすことを目的とした比喩を使用するようにしております。

精神的な成長を。

もちろん促成栽培はいくらでもできます。ただ、精神的なものはついてきません。本当に表現したいものを求める気持ちがあって初めて、その音を作り出す筋肉や集中力が育ってきます。だから、その前に求める気持ちを大切に共有したいと取り組んでいます。

それが、クレモナが唯一無二のアンサンブルをする集団へと進化するポイントだと私は考えています。

ぜひ、一度公開練習にお越しください。

クラシック音楽の先端のクリエーションの現場はいつでも皆さまのご来店を心よりお待ちしております。

2023.04.29 監督かじくん

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