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音響芸術へのこだわり

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

 昨日は公開練習でした。本番が迫ってきているのでピリピリとした雰囲気になっております。

 さて、昨日は「ルミエール組曲」を見直す作業をしました。今回はバンドネオンとジャズトリオをイメージしたMIDIとの共演になります。

 以前から事あるごとに、音響やMIDIを使用してステージに立つことに質問を頂戴することがあります。まず、クラシック音楽の世界ではピアノのソロのコンサートであっても、オーケストラのコンサートであっても、音響を入れることはほとんどありません。むしろ、生音だけでするから良いという意見もあります。

 でも、クレモナではたとえ200人ほどのキャパのコンサートでも可能な限り音響を入れて取り組むことにしています。一つは明瞭度をはっきりとさせたいと言うごく一般的な意見と、もう一つは新しいクリエーションを目指したいという音楽家としての拘りから、音響を入れてコンサートすることを私は選んでいます。

 さらに、定期公演となると大掛かりな音響の仕組みになります。スピーカーもたくさん組み上げますし、開場BGMからベルまで自分たちで作成します。この辺り、ホールのものや既製品を使用しないのが大切なことで、一番大切にしている定期公演では、その会場に流れる音は全て自分たちに相応しいものを準備すると言うことが、私たちのホスピタリティでもあります。

 また、単に音響というと、演奏している音を増幅させるだけだと言う意見もあります。もちろん、明瞭度を上げると言う点では同義語ですが、私たちは単に音響とは言わずに「音響芸術」と呼ぶようにしています。

 PAのタクの前に座っているオペレーターも演奏者と同じ表現者であり、一緒にステージを作り上げています。今回だったら、MIDIの他に、環境音のSEやナレーションも同時に入ります。それら全てのバランスの最適化を測れる人でないとこなせない仕事と言えます。

 また、演奏中にナレーションが入るのって普段のコンサートではあまりありませんが、それ以外にも仕掛けがたっぷりと用意しております。きっかけや約束事がたくさんあるので、オペレーターの仕事はかなり大変。音楽や、管楽器を相当熟知していないとできない仕事です。

 でも、それだけなら時間とお金をかけることができたら誰でもできます。クレモナのように自作するとなると結構大変ですが、アウトソーシングすればそれなりのものはできると思われます。

 大事なのは自分たちで作るからこそできるその先のクリエーションがあります。例えば、真っ暗(暗転)にしての演奏などもそうです。視覚的な要素を全て取り除いて、純粋に音楽を楽しんでもらえるように真っ暗にして演奏する楽曲があります。

 こうなってくると単に暗譜しているだけでは演奏は成立しません。多くの演奏者が知らず知らずに視覚で補っている知覚を、耳だけにして演奏すると言うことです。絶対に誰にも真似できないクリエーションで表現する。だから生き残ることができると私は考えています。

 クレモナの定期公演を聞きにくると言うことは、若手演奏家の成長期と過程を見ると言うことになると思いますが、もしかしたらクラシック音楽の新しいクリエーションの歴史の幕開けを体験すると言うことになるかも知れません。

 ぜひ、名曲と名演の初演にお立ち会いください。

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