昨日は、トリオでの練習だった。以前から「トランスクライブ」について話をしているのだけど、その重要性について、参考となる動画をご紹介。
Kong-Ju Leeという人ですが、このリーさんピアノもかなり上手。先週お話ししたホロヴィッツの演奏の「トランスクライブ」の超オタクな人。なんせ、自分で動画を作ってYouTubeにあげるくらい力入っている。(と言っても、チャンネル登録は100人もいない非常に目立たない動画ですが…)
動画では、トランスクライブについて色々と話をしている。採譜した楽譜は700枚以上にも及ぶみたいで、ヘンテコな理屈のように思われるかも知れませんが、これくらい愛を持って、楽譜に向き合う姿に共感を覚えてしまう。
偉大な演奏家が残した演奏を楽譜にしてそれを演奏するということは、過去と今を繋ぐ大切な作業だと思うし、市販されているような楽譜では全く身に付かない、特別な発見があり、それをさらにクリエーションした楽譜にすることがクレモナの試みている新しい表現でもある。
「イカれた天才が見た世界を体感すること」
ホロヴィッツのことをイカれた天才を言うのは、少し抵抗があるのだけど、茶目っ気たっぷりで、インプロを取り入れるピアニストの事を敬意を持って、そう表現したいと思う。
このイカれたホロヴィッツは、ショパンにしても、チャイコフスキーにしても、私たちが見ている風景とは違う風景を見ていたと思う。凡人である私には、見る事ができない世界観と言ってもいいと思う。
ピアソラにしてもそうだ。
私には、「天使」と言うものも、「悪魔」と言うのも、ピアソラのように描くことはできない。しかも、ピアソラの出版されている楽譜は、「ボイシング」がめちゃくちゃ。(これは仕方がないのですが…)残念だけど市販の譜面を使うと言うことは、今の時代、プロとは言わなくなって来ている。
残された音源を紐解くと、ピアソラがやりたかった世界観がようく見えてくる。そのためには、「トランスクライブ」をしなければいけない。
でなければ、ただの劣化したコピーでしかない
ゴッホの作品もそうだけど、イカれた天才は、彼の作品のように世界を見る事ができたのだと思う。ある意味で岡本太郎もそうだけど、凡人の私には「太陽」は、彼のように見る事ができない。
残念ながら、音楽は美術のように視覚的に判断することができないので、作曲家の世界観というのは、分かりにくい。でも、ピアソラは違う。本人による最高の演奏が残されているので、いつでも原点に戻る事ができる。
クレモナは、ピアソラの演奏をしっかりと聞くことから始まる。この聞くという言葉は、楽譜にできるくらい聴き込むということを意味している。つまり、ピアソラをトランスクライブして、そこからのインプロをさらに採譜するという作業だ。恐らく、日本国内でこのレベルでクラシック音楽をしている演奏家は、ほとんどいないと思う。
それくらい、20世紀後半の作曲家の音楽を演奏すると言うことは、難しく時間のかかる作業でもある。
今シーズン、さらに素晴らしい演奏となるように、先端のクリエーションで仕上がって来ている。きっと、これまでにないクラシックの新しい表現を皆さまにお届けできると自負している。ぜひ、楽しみにしていてください。
監督かじくん
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