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演奏家として、自由になること。

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

レコーディングが終わりひと息つく間もなく練習が再開された。「同じ曲をするのに新たに練習するの?」そんな意見も耳にする事がある。確かにクラシック音楽の場合、書かれた音符を演奏するので、クリエイティブという言葉が馴染みにくいと思われる方もおられる。本日はその辺りのお話を解説しようと思う。

クリエイティブって何?

 まず、音符を素晴らしい音楽に仕上げるのが演奏家の大切な役割だ。その過程で、重要になるのが、クリエイティブであり、演奏家は、常に新しい音楽性について追求しなければいけない。

 さらに、「クリエイティブ」。これこそが、演奏家という職業が存在する理由でもある。逆に、音を並べるだけで、人々が感動するのであれば、演奏家はいらない。もしかしたら、今は単に機械的に並んでいる音に感動する人もおられるのかも知れないし、気がついていない人もたくさんいると思う。(この話はまたにする)

 で、演奏家がクリエイティブであるためにはどうすれば良いのかという話になる。

 引用サイト:
https://slippedisc.com/2018/05/maria-joao-pires-talks-about-getting-free/

 動画で右側に座っている女性は、ピアニストで、先日ご紹介した、公開リハーサルの惨劇で演奏していた人で、現在は演奏活動は引退して、後進の指導に注力しているピリスという人だ。この動画は、引退の前夜、自分の弟子と対談している動画である。

 ここでピリスは、演奏家がクリエイティブであるためにどうすれば良いのか語っている。簡単に要約すると「全てから自由でなければいけない」とピリスは弟子に伝えている。

 私は、ピリスの言葉に深く共感する。だた、自由になるというのは非常に難しく、ステージに立って演奏するということは、非常に緊張する時間でもあり、「自由である」というのは、言葉で言うのは簡単だけど、実行に移すのはとっても難しい。

 残念ながら、今のクレモナの演奏は、ピリスのいう「自由である」と言う立場から程遠いと思う。その原因の大半は、監督が事細かく指導しているからだ。ただそれは、練習での話であり、ステージでより自由に演奏するために必要不可欠なことだと私は考えているけど、実際はどうだろう?

 そんなことを考えながら、ピリスの動画を見てみたら、とてつもなく感動してしまった。だって、この人、自分の引退の前夜でも弟子にこんな言葉を言うんだし、ここまで穏やかになれるって凄いと思う。

聴衆を受け容れる

 さらに、「聴衆があなたのことを批判しても、聴衆を愛さなければならない」と、言っている。聞いてくださっている「人を愛する」と言うのも、言葉にするのは簡単だけど、非常に難しいと。

 さすが、ピリスだと感心するのもすぐにできるけど、大切なステージの直前に、これほどリラックスできるように心がけたいと強く思った。聴衆を受け入れて、何かを伝えようという気持ちがもっと表出すれば、クレモナはさらに素晴らしい演奏家になるのかも知れないと、改めて感じたし、そう言う意味において、この日の練習では、さらに細かく楽譜を読み取る作業に時間を費やした。

2022.09.14 監督かじくん

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