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芸術を追求するということ

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

公開練習がワンポイントアドバイスになってしまっている。僕は、ゴルフやテニスのレッスンプロじゃないんだから、もっと良い仕事がしたい。

服部緑地野外音楽堂でのコンサートに向けて、僕はもっと、芸術を追求していきたいと考えています。

これは、多くの聴衆にとって理解に苦しむ難解な音楽を提供するという意味ではなく、四人の演奏家が、より高いレベルでの演奏を追求するという意味で考えており、その高い技術をお客さまに楽しんでいただける機会がコンサートだと考えております。

一方、メンバーといいますと、非常に難しいことを要求されるので、演奏するのも大変。それでも必死についてきて、そういった姿勢に心から感謝していますが、やはりまだまだ。

まず、正しいランゲージ、ヴォイシング、フレージングを身につけようとし過ぎているように感じる時があります。もちろん、それらは非常に大切なんですが、それだけでは不十分。

アンサンブルについて

よくアンサンブルの問題定義をする時に、リズムや、ハーモニーや、グルーブについて言及する人がいると思いますが、音楽で何が一番大切かというと、やはり「メロディ(旋律)」なんです。

と言うのも、初めて聞く曲であっても、人は「メロディ」だけを聞き分けることができます。これは、大編成のオーケストラであっても、何十人が一斉に演奏していても、たった一人の旋律を聞き取れる能力が誰にでも備わっているからで、逆にリズムやハーモニーを聞き分けるには、それなりの訓練が必要になってきます。(ここがまだコンピュータに人間が負けていない領域でもあります)

では、今のクレモナのメロディの表現はと言いますと、まだまだ改善の余地がたくさんあります。

まず、メロディがどこから生まれてくるのかと説明しますと、それぞれの調整の中にあるスケール(音階)から作られています。つまり、長調なら長音階になり、短調なら短音階になり、さらに短調では、メロデックマイナーやハーモニックマイナーと呼ばれるスケールが基本となっています。

これは、ハ長調でいう「ドレミファソラシド」という一般的なもので、それぞれの調を使った音階練習というのを管楽器の人は徹底的にトレーニングしています。もちろんピアノも同様で、スケールの練習というのは、最も大切な練習の一つとして、幼い時からの毎日の練習に不可欠なことになっています。

でも、それがある意味、弊害となることもあります。

つまり、多くの楽曲は、長音階や短音階という単純なスケールだで構成されていません。より複雑な音楽が組み込まれています。

本日、問題になっているのは、「マイナーペンタトニックスケール」。一般的なクラシック音楽の作品でも普通に使われている音階ですが、演奏者の基礎的な練習では一切取り扱われることのないスケールみたいです。もしかしたら、音大を出ただけでは、その言葉も知らないのかも知れません。当然、そういったメロディが出てくると、勝手が違うため下手くそになってしまいます。

これは、スケールが演奏者の身体に入っていないため、旋律が歌えていないという現象になるからです。もちろん、個々のフレーズはしっかりと見ているし、正しいリズムで、正しいピッチではあるのですが、音楽全体を見ることができていないために、ロスト(行方不明・落ちているという意味)してしまっています。

さらに、言いますと、ロストしている事に気が付いていないのかも知れません。結構、重症です。

こうなってしまうと、モーダルに解釈できる部分がやたらと強調されてしまいます。

モーダルというのは、コード進行よりもモード(旋法)を用いて演奏される音楽のことを言いますが、コードに支配されない開放感だけを表出させてしまう演奏になってしまい、音楽的な内容からは離れてしまいます。

どう考えても、良いフィールにはなりません。フィールがよくないとリズムが停滞してしまいます。そして、リズムとフィールが良くないと、和音が成立しないという現象になってしまいます。

多くの演奏家が、楽譜通りに演奏していると思い込んでいるけど、実はロストしているのは、こういった所に原因があると思います。

本当に申し訳ないのですが、こういう演奏、めっちゃ気持ち悪いんです。心の底から、「なんだよ、そんなポンニチなメロディは!」と、言ってしまいます。

では、どうしたら良いのでしょうか?

もちろん、現場で使えるレベルで、和声とソルフェージュのスキルを身に着ける事が大切になってくるのですが、これって非常に大変です。音楽大学でしっかりと教えてくれていたらといつも思うのですが、日本ではクラシック音楽の高等教育は望めないのかも知れません。

という事なんで、まずは、素晴らしい演奏家の演奏を聴くことから始めてはどうでしょうか?

楽器はなんでも良いと思うのですが、超一流の演奏家の演奏がどうして素晴らしいのか。彼らが、どんなフィールを感じて演奏しているのか、じっくりと観察することから始めてみるのはどうでしょうか?

伸び悩んでいる多くの若手演奏家の皆さん、ぜひコンサートに出かけてみてください。

2023年7月30日 監督かじくん

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