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シカゴ響×ブーレーズ

監督日誌

 クレモナの音楽監督を務めています「かじくん」です。

 シカゴ響の演奏が素晴らしいと昨日もブログで申し上げましたが、さらに深掘りしていきます。錚々たる演奏家がいて、しかもアンサンブルする能力は世界最高峰の実力を有しているというのは、周知のことだと思います。一般的に、演奏のレベルが高くなればなるほど、ソロスティックな演奏になりがちだし、アンサンブル能力は比例して高いということはないと思います。

 でも、このオケのアンサンブル能力は抜群に素晴らしいです。

シカゴ響が素晴らしいのは

 まず、本拠地シカゴにあるシンフォニー・センターは1904年に完成した歴史のあるホールですが、音響面において決して良いホールだとは言えません。例えば、ウィーン学友協会とウィーンフィル、ベルリン・フィルハーモニーとベルリン・フィルとか、素晴らしいホールを本拠地としているオーケストラと比べてしまうと、シカゴ響は残念ながら普段の演奏の場所は決して恵まれているとは言えません。

 ブーレーズは、そんな良い環境ではないホールで、世界最高峰のオケをしっかりとトレーニングしたということです。彼の指揮の特徴しては、決して振りすぎず、楽譜の細かなディテールを大切にして、入念なリハーサルによって全て完璧にバランスを取ることを目標としていると思われます。もちろん、当時音楽監督をしていたバレンボイムが徹底的に音楽的な表現に磨きを上げていったのは周知の通りですが、裏方的にブーレーズは、アンサンブルをトレーニングしたというのが私の評価です。

全ての音が聞こえると言うこと

 ブーレーズはどういう人なのかと言うと、並外れた聴覚があると私は考えています。全ての音が聞こえるから出来るバランスってあると思うんです。響きの良くない環境でひたすら音楽を作る作業をしていると、そういった能力が身につくのかも知れません。残念ながら私はその足元にも及んでいません。

 そう、ブーレーズがやり遂げたかった音響というのは、全ての音がクリアに響いて、解像度の良い写真を見ているように、細部までしっかりと聞こえる音響だと言うのがわかります。

 クレモナの場合、常に4人で演奏しているので、メンバーは全ての音を理解して演奏しています。80人もいるオーケストラで同様の事をするのは、おそらく不可能だし、あえて求める必要もないと思いますが、クレモナの場合は他の人の音を理解すると言うことが、アンサンブルの第一歩であると考えております。そして、全ての音をクリアに響かせる。

響きって誰が作るのでしょうか

 全ての音がクリアな状態を解像度の良い写真に例えましたが、音響的には明瞭度とも言います。ホールで明瞭度を上げるためには、いくつか方法がありますが、クレモナでは無駄に音量を上げるリスクは致しません。

 音楽監督はまず、オケ中の音が最適な状況になっているのかを確認します。その時に実際に出ている音が、書かれた楽譜と同一になっているのかが大切なポイントです。さらにその音が客席まで同じ状態で届いているのかが、何よりも大切になります。

 では、シカゴ響のようにバケモノ級ソリストが多数主席奏者として君臨しているようなオケでは、お互いに牽制し合ってぶつかり合ったりするのではと心配したりしますが、そこでポイントになるのが、第二奏者の存在だと思います。

 首席奏者が、「聴きたまえ素晴らしい演奏だろ!」と言うような姿勢で演奏したとしても、全体の響きの調和を第二奏者がしっかりと取り組んでいたらどうでしょうか?シカゴ響や、ベルリン・フィルの並み外れた音楽はここにあるように思います。

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