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ホロヴィッツが演奏する「星条旗よ永遠なれ」から学ぶこと。

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

シーズン直前ということでいい感じで仕上がってきている。今年は、1ミリもピッチを狂わせないという、人間には到底できない離業を目指して頑張ることにしている。

最小の努力で最大の成果を目指すのが演奏効果

 まず、こちらの演奏を聴いてもらいたい。

 この曲は「星条旗よ永遠なれ」(スーザ作曲)と言うマーチだけど、ホロビッツと言うピアニストが編曲した超有名な作品。中間部の下属調(トリオ)に入ると、どうしても3本の手で演奏しているように聞こえる。でも、実際に編曲者であるホロビッツが一人で演奏している。一体、どうなっているのだろうか?

 種明かしから言うと、たくみにオクターブの連続を多用して、余分な内声を気がつかない程度に削って、何とかそれらしく聞こえるようにした作品なんだけど、素晴らしい発想がこの譜面には隠されていて、楽譜を見ると驚きの連続でしかない。

 徹底的に工夫を重ねたホロビッツは、きっと茶目っ気で編曲をしたと思うのだけど、後世の私たちにとっては、その成果物が発想の重要なヒントになっている。

 でも、この演奏はホロビッツの強い意志により楽譜にはなっていない。(最近はAIによって解析された演奏不可能な楽譜が出たみたいで、見てみたけど失笑するしかなかった)

 では、どうして私をはじめ、この演奏の楽譜を見たことがあると言う人がいるのだろうか?

 答えは簡単。みんな「耳コピ」をしたからだ。超絶技巧のかぎりが盛り込まれたこの編曲、聴衆たちを驚愕させた奏法の謎は、採譜(耳コピ)することで、解読できる。まるで、マジックの種明かしをするような気分だ。

手の内の音楽=ボイシング

 でも、単に音を拾うだけでは、先ほどのAIの楽譜と同様で、演奏することができない。演奏可能なピアノスティックではないと言う意味だ。そこで、大切になってくるのが「ボイシング」と言う考え方になる。

 つまり、どのように演奏すれば、少人数であっても、大編成のオーケストラに負けないサウンドを出すことができるのか、クレモナが大切にしているポイントでもある。

 実際になっている音をどのように共鳴させるのか、最適な響きを常に導き出す「ボイシング」を考えるのが、大切なスキルになると言うこと。

 シーズンを迎えるにあたり、クレモナでは徹底的に「ボイシング」について考えるようにしている。

 この日の練習では、最終的な演奏の解を全員で確認して終了した。次は11日(木)の練習で最後の仕上げになる。

 きっと素晴らしいコンサートになりそうで、心がワクワク。シーズンの開幕への高揚感でいっぱいだ。ぜひ、期待してほしい。

監督かじくん

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