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「悪魔をやっつけろ」の「やっつけろ」は誤訳ではないか

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

本日は、定期公演までの最後のしっかりとした練習となりました。前日は全ての音楽スタッフが入ってのリハーサルになるので、必要最小限の練習しかできません。

よく本番の前で、調子を上げるように考えて練習をする音楽監督もおられますが、私は全く気にしないで、常にベストを求めるように心がけています。

というわけで、本日も細部に拘りながら、最終的なバランスを調整するようにしました。

今回のメインとなる作品群「悪魔」という作品ですが、三曲を通して聞くと、非常にバランスがよくて調和の取れた作品だとご理解いただけると思います。

どうしてもタイトルのイメージからくる先入観みたいなものがあって、「力強い音楽」だとか、「大きなサウンド」の楽曲を期待してしまいますが、音楽的には実にきめ細かい中身になっています。

さらに、文学的な要素というか、音楽自体にはテキスト性は全くありません。その辺りの形容詞との親和性が低いのもピアソラの特徴。なのでどうしても中身は硬派になってしまいます。

最終曲の「悪魔をやっつけろ」という邦題が付いている曲に至っては、原語からは想像もつかない誤訳の邦題になっており、日本語のタイトルそのものが、鑑賞の妨げになっているように思います。

正義と悪魔の対戦みたいな音楽を想像してこの曲を聴くと驚かれると思いますが、楽曲からくるイメージは「let’s go go」という感じがぴったりで、悪魔をやっつけにいくというより、直前の「ロマンス」に対しての「let’s go」と解釈するのが自然だと私は考えています。

しかもテンポ設定を200という早さにしました。きっと驚かれるテンポだと思います。このテンポで演奏するとあっという間に終わるところですが、今回はさらに繰り返しと再現部を付け加えて、カッコ良い作品に仕上げました。

定期公演のラストに相応しい素晴らしい作品です。これ、びっくりするほど良い中身になっております。

どのオーケストラも定期演奏会を一番大切にしています。もちろんクレモナでも同様です。なので、今までにないものを定期公演では取り組むようにしています。ある種の実験的な要素もありますが、日頃のステージとは全く違うコンサートになります。この辺りの仕掛けがライブの醍醐味であり、一夜の一回性に持てる全ての能力を全力で出し切ります。

また、設備も大掛かりになり、音響のスタッフもたくさん入ったりするのも特徴的です。この辺りの先端のクリエーションを楽しむというのも定期公演ならではですね。

ここで、私が何を言いたいのかと言いますと、定期を聞いて初めてその団体を評価できるということです。日頃のコンサートでは絶対に出し切らない演奏があるんです。非常にわかりにくいですよね?

例えば、ミシュランの星が3つのレストランがあったとして、お得なランチを食べたからと言ってそのお店の味が分かったとならないのと同じで、クラシック音楽の団体のコンサートは定期公演を聞かないでわかる事はないということです。

ですから、ぜひ定期公演を聞いて、その感想をご教授ください。まだまだチケット、あります!

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