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「美しい音」「小さい音」

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

 今週はピアノとフルートの練習となりました。こういったパートでの練習は基本的に私の出番は少なく、メンバーが自主的に練習を進めます。

 私はただボーっとみているのですが、時々突拍子もない質問があるので、リラックスしているように見せかけて、真剣に耳を傾けています。

「レコード芸術」誌 2023年2月号にて「準特選盤」

 さて、クラシック音楽専門の「レコード芸術」という雑誌があり、その誌面で先日発売したクレモナのCDが【準・特撰盤】に選ばれました。本当は【特撰盤】を狙っていたので、【準】というのは、不本意ではありますが、それでも20代女子だけのユニットとしては快挙であるみたいです。

 評論したお二人の意見を総合すると、アンサンブルのテクニックと、クリアなサウンドはピカイチ。反面、緩徐でロマンティックな楽曲では、気合が入りすぎていて、もう少し力を抜いたほうが良いという意見でした。

課題は、緩徐楽章での「美しさ」

 全くその通りで、テクニックを誰よりも磨き上げて、クリアな音で表出するというのをこれまで、しっかりと取り組んできたのだから、その辺りはちゃんと聴いてくれたというのが、ホッとしたところです。ただ、緩徐楽章での「美しい音」というのは、まさに今のクレモナが抱えている大きな課題点で、その辺り、今後しっかりとアプローチしなければならないと思っていたところだったの、なんとなく痛いところをつかれたというのが、率直な感想です。

 さて、現在取り組んでいる大切な課題「美しい音」というのは、これまで、この監督日誌でもお話していました。

音圧レベル競争には参加しない

 一方、クラシック音楽からポップスまでの音楽は「音圧レベル競争」みたいなものがあり、上下カットして圧縮してでも音圧を上げることが大切だと思われていたところがあり、以前から私は疑問に思っていました。明瞭度を上げるという意味において、音量を求めることはあっても、他者との比較において音圧を上げるということは致しません。

 徹底的に、クリアな音を追求し、それらを犠牲にする表現はしないということです。

さらに、クリアな音の先にある「美しい音」についてご説明いたします。

 先週、「肉体的に鳥肌が立つ音楽」と定義をお話しましたが、現実はもっと感覚的なものだと思うんです。

 言葉にすると難しいのですが、可能な限り小さな音で演奏をして、それをマイクで大きく拾ったりして、まるで顕微鏡でのぞいた世界みたいに、現実なんだけどファンタジーみたいなものを、感覚的に表出したいと思っています。

 ポイントとなる「小さい音」というのは、これまでの音圧レベルの競争からは、全く別の次元のものになりますが、これは日頃の環境に起因していると思います。

 というのも、過去20年ぐらいの間で、生演奏の仕事の現場以外で、大音量を聞く機会がほとんどなく、音楽を聴くのはもっぱらイヤホンからです。自宅で作業する時も、イヤホンを使用するというのが日常です。

 その時、小さい音をイヤホンで聴いた時の音の効果があって、これが結構いい感じなんです。周りの環境音がすごくリアルに聞こえてくるし、空間と一体になるような感覚になる時があります。

 言い換えると、周りに守られているというような感覚に近いものがあって、夜の静かな時間では、さらに集中できる音空間になり、安らぎみたいな時間を過ごせる時があります。

解像度の良い空間に流れる美しい音

 そういった音は、透明感があり、見晴らしの良いものであり、クレモナでは、解像度の良い空間に流れる「美しい音」を表現したいと願っております。

 もちろん、「エモーショナル」なものであっても良いと思います。ただ、細かすぎる描写はしないように心がけたいし、ドラマチックに盛り上げていく音楽も感心しません。

 甘ったるい表現もしないし、意味を持たせすぎることも絶対にしません。余分なものを削り落として、それでも残る美しさを表現したいと考えております。

 6月の定期公演では、最高に尖った表現で、美しい音楽について皆さまにご披露できれば幸いです。そろそろ、ネットでの販売が開始されました。ぜひ、この機会に良いお席をご予約ください。

2023.01.22  監督かじくん

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