以前から素朴な疑問だったのですが、「シュクレ」のような編成の場合、一般的に、サックスとフルートはメインの演奏者で、ピアノは伴奏者と決めがちなところがあります。つまり、ピアノは引き立て役でしかなく、主役である管楽器に邪魔をしないように演奏するのが普通に求められたりもします。
これには諸般の事情があり、少し説明します。
まず、管楽器や弦楽器の場合、ソロの楽曲、ソロソナタなどがあるのですが、そういった楽曲では、ピアニストは伴奏になります。また、オーケストラが伴奏になるようなコンチェルトも、小さい会場でのコンサートにわざわざオーケストラを呼んでは来れないので、代わりにピアノにアレンジされた楽譜で演奏します。この場合も、ピアニストは伴奏者になります。
でも、ピアノとヴァイオリンとチェロといった編成、ピアノトリオと言いますが、ピアニストは伴奏者ではなく、共演者になります。作られた時代が違うとか、色々なご意見は一旦置いといたとして、伴奏者と共演者の違いは簡単。主体となる演奏者がいる場合は、ピアニストが伴奏者にならざるを得ないということです。
つまり、クラシック音楽にしろ、懐かしの映画音楽にしろ、演奏したいと思うのは管楽器の演奏者だからです。もう少しわかりやすくいうと、楽譜の購入者ということです。
楽譜の購入者=ソリスト
大手楽器店の隅にある楽譜コーナーの、「フルートで演奏したい名曲集」や、「サックスで奏でるジャズ曲集」というのは、大抵ピアノが伴奏譜としてついてきます。
一方、同じ楽譜のコーナーにある「ピアノで演奏するスクリーンミュージック」には、サックスやフルートの譜面はなく、ピアノの譜面だけで販売されています。
さらに説明すると、ピアニストが演奏したい楽譜を選ぶ時は、自分だけの楽譜を購入するということ。一方、他の楽器の方が演奏したい楽譜を選ぶときは、伴奏譜のついている楽譜を購入するということになります。
その結果、管楽器とピアニストが一緒に演奏する時は、ピアニストが伴奏者になり、お金を出して楽譜を購入した管楽器奏者は、ソリストになるようになっています。
もちろん、ピアノと管楽器、それぞれが主役になるような譜面があれば良いのかもしれませんが、それでは楽譜はなかなか売れません。おかしな話ですが、そういうものです。
では、シュクレの場合はどうでしょうか?
伴奏者として控え目な演奏をするのが良いのか、対等な立場で演奏するのが良いのか。その答えは、当然、後者になります。
なので、今回のコンサートではピアノの蓋は開けて演奏しました。一般的に、ピアノの蓋を半分ぐらいまでにしてコンサートをするのが一般的ですが、私はあえてピアニストを共演という意味で捉えています。
結果として、ピアノの音量は大きくなりましたが、蓋を半開にしたこもった音での演奏にはならなかったので、期待した音楽になっていたというのが、私の感想です。こうやって、ピアノと管楽器がアンサンブルできるのがクレモナということだし、何よりそれだけの技術があるということでもあります。一般的な演奏家ではそうはいきません。
では、どのように違った音楽になっているのか、どのようなバランスで演奏したのか、その答えはCDを聴いていただくとよくわかると思います。是非とも、ご購入して下さい。
コメント