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音楽に国境は、ある?

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

この日は、定期公演に向けて前半のメインになる楽曲を中心に練習。これまで同様「静寂」というテーマを基に、新しいアンサンブルの表現について詳しく紐解くレッスンとなりました。

さて、皆さまは「音楽には国境がない」とか、「音楽は国境を越える」という言葉を聞いたことがありますか?音楽は国境や民族を超えて人類共有の文化という意味で使われているのでしょうが、個人的に私は違うと思っています。本日は、その辺りのお話になります。

音楽は「学習」が必要

まず、「音楽に国境はない」と言うけど、音楽は聴くものであると同時に、読んで理解するものだと思うんです。そして音楽を正しく読むためには、「学習」が必要となります。

それは、音楽の語法や文法を理解しなければならないし、単語も覚えなければいけません。つまり、音楽は語学と同じように学習が必要な側面があるということです。そして、これが意味するのは、つまり、「音楽には国境がある」と言うことだと思います。

クレモナの練習では日本語を使用して進めますが、基本的に使う音楽用語は英語が主流。それは、音楽の分野において日本語がまだ発達していないという事に起因していますが、クラシック音楽においても、新しい楽語の殆どが、その元のなっているジャズなどから派生している楽語を使用しているからかもしれません。

「レイドバック」という言葉について

この日は、たっぷりと音の長さを保って演奏するということに主眼を当てて練習をしました。クラシック音楽の用語では、「テヌート」と「ソステヌート」という楽語を使用したりもしますが、この日は「レイドバックする」という言葉に着目して練習を進めました。

もともとはジャズの世界で使われている専門用語みたいですが、今日ではクラシック音楽の現場でも普通に使用されます。

一般的に流布している単語ですが、日本の音楽大学では教えたりはしないみたいで、それが意味するのは、現場で使われる言葉を理解しないまま大学を卒業するということで、この辺りのお話は、いずれしたいと思いますが、まず使用する言葉の共通理解から始めなければなりません。

また、音を保つという意味で使用される言葉は他にもありますが、「テヌート」と「ソステヌート」という基本的な言葉の違いも知らない演奏家もたくさんいます。極東に住む演奏家がはじめにぶち当たる国境がそこにあります。

当然、クレモナでは正しい音楽表現と専門用語を共有するという初歩的なことを大切にしています。

邦楽に「国境の壁」を感じてしまう

また、近世邦楽にも記号的に音を表記していますが、多くの日本人にはそういった知識がありません。だから、いつまで経ってもそれらを聴くことはできても、理解が深まることがありません。

おかしな言い方になりますが、「国境の壁」というのを、邦楽にも感じることができます。つまり、今の日本人にとっては邦楽は外国語のようなものということです。

それでも音楽は国境を超えた存在なのでしょうか?

文学と比べると、ある程度国境は超えた存在なのかもしれないけど、「音楽について語る」ということを前提に考えると、前述したように「国境の壁」は存在していると思います。でも、多くの人々はそれを認めていません。

もしかしたら、「音楽は誰にでもわからなければならない」という呪縛的なものが存在しているのかもしれないって思ったりもします。

多く語らなければならないと思う

そんな危機感に直面して、私たちは、多くの人にとって難しい音楽を楽しんでもらえるために、もっと音楽について語らなければならないと考えるようになりました。

もちろん、私のレッスンの現場においても同様に、言葉を通して共通認識を深めて、言葉以上に雄弁な音楽を表現したいと願っております。

そして、音楽を聴いて深い感動を抱く多くの人々と共に、語り合える喜びを感受する一助になればと願うばかりです。

そんな私たちの先端のクリエーションの現場が公開練習になります。夜の7時半から9時ぐらいまでの時間で練習をしていますが、絶対に他所では体験できない音楽体験ができると自負しております。

ぜひ、遊びにいらしてください。

2023年5月6日 監督かじくん

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