新シーズン開幕!|2022.08.13 服部緑地野外音楽堂「たそがれコンサート」

『クレモナ』の新シーズン(2022-2023)がついに開幕した。
「去年と同じ景色は見ない」というのがわたしたちの毎年の合言葉であり、その気持ちで弛まず走り続けているからこそ今がある。

服部緑地野外音楽堂での「たそがれコンサート」から始まる新シーズン(2022-2023)。

今年で3度目となる『服部緑地野外音楽堂』での『たそがれコンサート』は、そんな新シーズンの一本目の公演だった。
1回目は台風の前の照り付けるような晴天、2回目は体験したことのないような大雨のち、爽やかな夕風。3回目は大雨、のち、絶望的な湿度。無風状態。いつもは涼しげなお客さまも、毎年恒例のプログラムうちわで終始パタパタとあちこちあおいでいる。

今シーズンの課題「ボイシング」「バランス」「ピッチ」

今シーズン特にアンサンブルで気を使ったのが「ボイシング」と「バランス」、そして「ピッチ」である。一昨年の課題は「立ち上がりの速さ」「グルーヴ」、去年の課題は「どんな現場でも中音を聴いてアンサンブルをする」ということだったが、今年はその先のさらに緻密なアンサンブルを叩き込まれたように感じる。


「ボイシング」とはつまり、音楽における「予定調和」にたどり着くための「正しいプロセス」の作り方であり、これは個人の譜面上だけではなく、アンサンブルとして、だれが全体の中でどういった役割を果たしてそこに行きつくのか、ということを考えないといけない。それを効果的に表出するためには、完璧なバランス感覚で演奏をしないといけない。(しかも!ここでは「不安定さ」というバランスのとり方も求められている。これは本当に難しい。)

『クレモナ』は発音体の違う4つの楽器(フルート/エアーリード、ソプラノサックス/シングルリード、ホルン/ヴァジング、ファゴット/ダブルリード)からなるアンサンブルなので、「せーの、1拍目。」という感覚がそれぞれ全く違う。それぞれが音域の問題やピッチの問題を抱えつつも同時並行でバランスを取りつつ音楽を進める、というのはより考え、より体に覚えさせることを要求される。

しかも、今シーズン取り組む「天使の組曲」と「悪魔の作品群」は、テーマがイメージを作ってしまいがちで、そこからより深く音楽を掘り起こしていくことに今までに感じたことのないようなストレスを感じた。

ピアソラの代表作であるはずの「天使の組曲」

特に「天使の組曲」はストーリーがあるようで、ない。どこで死んだのかも、どこで復活したのかもわからない、しかも、ミロンガって一人で踊るもんじゃないと言われたりで、この誰もがイメージできるようなタイトルの中に、自分の中にイメージが持てないことに気づくところから、譜読みが始まった。ピアソラの演奏を聴いていても、途中で飽きてくるのだ。自分の理解の範疇を超えているから?それとも、ピアソラのキンテートの中のメンバーも理解して演奏していなかったから?ピアソラの代表作であったし、色んな人たちが演奏しているのに、「これやりたい!」と思えなかった理由に向き合う5か月となった。


しかも、上がってきた楽譜も、「悪魔の作品群」のように、必死でさらわないといけないようなテクニカルな面があるわけでもなく、表面上では今までの楽譜よりも簡単に見えた。しかし、どう考えてもどの曲よりも難しかった。

「音楽について考える」思考法の糸口

「音楽について深く考える」方法は、大学では学べなかった。大学で学べなかったから、ああわたしは一生それを学ぶことができないんだろうと悲観さえしていた。しかし、この「天使の組曲」を通して、どうして巨匠たちの演奏が素晴らしいのか、どうしてピアソラの作品が素晴らしいのか、彼らが一体何を見て、何を考えようとしたのか、という思考の線の先を掴んだ気がした。それは蜘蛛の糸のような繊細さと強さがあり、丁寧に手繰り寄せ続ければ(つまり、この過度なストレスを受け続ければ)音楽芸術の真髄にたどり着けるのではないか、と思った。これは精神的に一流の演奏家として大きな第一歩となった。

「本気のステージ」を生み落とす。

だからこそ、野音の3部での「天使の組曲」全曲(さらに『クレモナ』スタイルの「暗譜」での)演奏は、極度の緊張感の中で始まった。極限に近い暑さと湿度、車の音、虫の声、カラスの鳴き声、お行儀の悪い親子や、楽曲の重要なところで鳴り響くラインの着信音、夕暮れ。そして、息を呑むお客さま。全てがあのステージを司り、その中心にわたしたちの演奏があった。
いわゆる「本気のステージ」を生み落としてしまったのだと思う。


「イカれた天才が見た世界」をお客さまと一緒に見る。

今シーズンから、わたしのMCもきちんと計画立てて、きちんと『クレモナ』の魅力(音楽も、コーヒーも。)を伝えられるように準備をしている。3部冒頭での監督へのインタビューは眉唾で、【イカれた天才が見た世界を見ること】についての話は、きっとお客さまへも、演奏前のわたしたちにも沁み込んだように感じた。みんながみんなピアソラという【イカれた天才】が見た世界を見ようと、していた。

ピアソラの次の世紀への第一歩。

新しいシーズンは、新しい境地から始まった。去年と同じ場所、同じ日で同じ時間、同じメンバーで開催した演奏会なのに、新しかった。2020年のコロナ時代1年目、2021年のピアソラ生誕100周年、そして2022年はピアソラの次の世紀の第一歩目だと実感した。「一度聴いてみたいステージ」から「一度見てみたいステージ」へ、そして「もう一度来たいステージ」を創り上げるのは、他でもないわたしたち『クレモナ』である。

2022.08.13 バンドマスターぴかりん

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