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5回目のレコーディングを終えて|2022.08.23 東京・羽田 サウンドクルーにて

『クレモナ』モダンタンゴ・ラボラトリ

8月23日は5回目のレコーディングとなった。06:15伊丹空港集合、08:45には東京・羽田のサウンドクルーに到着。10:00レック開始となった。

各曲レコーディングの順番に、演奏を振り返りたいと思う。引用で使ったのは、今後このアルバムのCM動画を作る用の撮影時にわたし(ぴかりん)が話した内容です。

悪魔のタンゴ

センセーショナルな和音やリズムと、クラシックの伝統的な和声進行やフーガの技法を取り入れて、新しい音楽を作り上げる。軽やかなんだけど、陰のある、神秘的な世界。

冒頭のだだだん、という打ち込みの連続は、練習の甲斐あって完璧に仕上げることができた。その後の流れは『クレモナ』が大切にしてきたグルーヴがしっかりと出て、まとまりのある仕上がりになったと思う。ここで特筆すべきはフルートゆきの中間部のソロだった。ライブ感のある、完璧な表現で、これを聴くためにこの曲は聴くべきだと思えるほど、素晴らしい演奏となった。わたし自身のソロは…聴いてからのお楽しみ。

悪魔をやっつけろ

クレモナの今出せる最高のテクニックを結集。ピアソラの原曲からさらに繰り返すことでよりテクニカルな、そしてより説得力のある演奏となった。


テンポの設定は最終練習まで全員で打ち合わせをして決めた。普段通りの演奏から考えると安全運転に感じたが、そうすることで確実に、着実な音作り、表現作りをすることができた。特にダイナミクスレンジの幅はこのテンポだったから可能だった部分もあったと思う。

わたしたちにとって安全運転なだけで、きっと聴き手になると高速なテンポになると思う。言うまでもなく、この曲はソプラノサックスみーこの後半のソロが必聴である。テンポ120からメトロノームで一目盛りずつテンポをこつこつ積み上げて練習してきた超アグレッシブかつ確固たる演奏は、きっと驚かれると思う。

悪魔のロマンス

この世のものとは思えないような繊細で美しい旋律を壊さないように、それでも音楽を前進させられるように表現。後半の羽ばたくような音楽はきっと誰もを元気付けることができるはず!

悪魔のタンゴ、悪魔をやっつけろで技術的にシビアな部分が多かったために、この曲ではテンポが緩やかな分、細部のピッチを気にしつつも、「表現の幅」を広げられた。

フルートゆきがイニシアチブを取って緩急つけたり、ファゴットを主軸に転調の繰り返しを、惰性にならないように、展開することができたのは収穫だったと思う。

それぞれが持つメロディが、それぞれの言語でよりソリスティックに豊かに歌えたのも大きなポイントだった。この曲くらいから、所要時間も巻き返してきて、「ノってきた」感じがした。

天使へのイントロダクション

冒頭の四分音符から、考えて考えて作り込んだ。何も示唆しないんだけれども、物語の大切な始まりをいかに表現するか。メトロノーム・チューナーと向き合う日々が続いた。テンポの変わり目はわたしたちの得意とするところなので、ストライクが決まったような爽快感をお楽しみいただけると思う。

冒頭部分からホルン・ファゴットのバランス、さらにフルートが入ったときのバランス、最後にソプラノサックスが入ったときのバランス、どれもうまく行ったように感じた。

テンポの変わり目はモニターヘッドフォン越しにしっかりとアンサンブルが出来たと思う。みんなで納得して作り上げてきたものをきちんと表出できた瞬間だった。

天使のミロンガ

モーツァルトやベートーヴェンがファゴットの音を「天使の歌声」だと表現した。曲中に出てくるファゴットのメロディはまさに「天使の歌声」そのもの。

個人的な話ではあるが、この曲を演奏したときに、レコーディング3日前に替えた「ボーカル(ファゴットの歌口の部分)」が大正解だったと思った。適切な倍音、適切なダイナミクス、適度なアタック。演奏イメージがそのまま表出できた。

それも要因として、基本的にはハーモニーの進行が何よりも重要になるこの曲では、まるで四人で演奏しているとは思えないような響きが作れたのではないかと思う。

開離した和音も、うまくまとめることができたように思う。ピアソラのキンテートの編成では出せない、管楽器ならではの倍音の重なり、響きのサスティンが生み出せたように思う。これは本当に仕上がりが楽しみ。

天使の死

冒頭のフーガはきっと現代のアンサンブルではクレモナしか出せない、ぱりっとしたクリアな音像をお楽しみいただけると思う。特に中間部はファゴットのをベースに積み上げた、まるで四人で演奏しているとは思えないような重厚な響きを聴いていただきたい。

冒頭のフーガはホルンのあやめが本当によく頑張った。今シーズン特に胃の痛い思いをしたと思うし、悩む部分も多かったように思うけれども、普通のホルン奏者じゃありえないテクニックをきちんと表現することができたと思った。従来のホルンの常識を覆すような仕上がりを期待している。

中間部分はフルート、サックス、ホルンそれぞれのメロディに対しての和声進行、表現の展開、二拍三連の響きはきっと素晴らしいものになっていると思う。全員が神経を使いつつも、自由に表現できたように感じた。ラストのテンポも快速なものとなり、フレッシュなエンディングを迎えられたと思う。

天使の復活

ここが『救い』の部分だときっと誰もがわかる三拍子のコラール、その後の喜びに満ち溢れたフーガの表現をこだわり抜いた。また、ホルンのメロディでのベースラインでは、ファゴットにしかできない様々な音色を表現している。

この曲は大まかに5セクションに分けることができる。

①テーマ ②コラール ③フーガ ④再現部 ⑤コーダ。

この①から⑤までの進行、流れは、こだわった分素晴らしい仕上がりとなったと思う。メンバーみんなが気に入っている②のコラールは、レコーディングでやっとここまでたどり着けた、という安堵感と、喜びに満ち溢れた演奏になったように感じた。(この時点で19時を過ぎていたので)

⑤のコーダに関して、テンポの設定は説得力のあるものとなったと思う。死んだものが復活する悲しみ、嘆きを表出することができたと思う。だって、永遠の命なんていらないんだもの。全員で息を吹き込み、音を紡ぎ、和声とリズムを織りなしているのがわかった。やり切った感があった。


ここで20:30となり、本当はもう2曲くらいライトな楽曲をレコーディングしようかという話もあったのだが、なしにして、5回目のレコーディングは終了となった。

超一流への新しい第一歩

演奏をしているわたしたちも、モニタリングしている監督も、実力の上がったことを実感したレコーディングとなった。『このレコーディングを、超一流への新しい第一歩としたい』という監督の言葉に、全員で賛同し、全員で踏み出せた大切な一歩となったと思う。

ピアソラの演奏を聴いて

帰ってきて、店のスピーカーでピアソラの「ニューヨークのアストル・ピアソラ」というアルバムを聴いた。ピアソラ自身の脂ののった演奏はもとより、オリジナルはもちろん素晴らしかった。しかし、レコーディングバランス、演奏、構成を含めて「説得力」について不十分な気がして、『クレモナ』のこの5枚目のCDがきっと次の時代へのトランスクリプションとなるな、と感じた。

ピアソラのコピーではなく、トランスクリプションだ。

原曲をコピーする、ピアソラの演奏を超える、ということではなく、次の時代をクリエイトする重要な1枚になると思う。
今からメンバー全員によるミックス作業、マスタリング作業、並行してジャケットやブックレットの制作を行う。12月24日に予定している第13回定期公演「悪魔と天使」で、発売を開始できればと思う。
定期公演のときには…このレコーディングよりもさらに発展した演奏を、しかもライブで、音響芸術と併せてお楽しみいただけるよう、さらに鍛錬を重ねたいと思う。

2022.08.23 バンドマスター ぴかりん

おまけ

レコーディング翌日、新ユニット「シュクレ!」で池田市住吉の『ラ・エスキーナ』さんでライブをしてきました。もちろんびっくりするくらいの疲労感だったんですが、温かいお客さま、大好きなママさんに全力で音楽をお届けしてきました。

ご来場いただいたお客さま、ママさん、ありがとうございました!

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