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「フィンガリング」、指使いが音楽を左右する。

監督日誌

 今月は全てシュクレの練習に充てられているので、どうしても細かい作業ばかりになってしまっていると、ちょっぴり反省。もう少し音楽を俯瞰できる様にと考えております。

 さて、この日の練習は先週に続いて「美しい音」について、深く考えていきました。管楽器の音色を考える時、色々なアプローチがあり、それぞれ有効な手段ではあるのですが、どうしても蔑ろになりがちなのは「フィンガリング」だと思います。

人間のクセとフィンガリング

 まず、上行系の場合、「指を離していく作業」が主体となりますが、人間は指を離す作業はどうしてもいい加減になりがち。特に左手では、パラっと雑に動かすクセがついている演奏家を目にすることがあります。ちなみに、ピアニストの場合は、下降系が雑になる演奏家が多いのも特徴ですが…。

 一方、下降系は「指を押えていく作業」になるので、しっかりとイメージしやすい場合が多いように思いますが、やはりこれも、左手の下降系が苦手な演奏家が多いのも特徴的です。

 また、曲に慣れてくると、フィンガリングが甘くなる人が多いもの事実です。難しいパッセージも自分の感覚になるまで練習すると、急にシナプスが繋がったように、滑らかに動きすぎて、結果として「滑ったフィンガリング」になってしまいます。

 これは単に「運指」の問題だけではなく、手のポジションと、そもそもの音楽の理解力に起因しているので、その辺りを本日はお話します。

オリジナルの楽譜を準備する

 その前に、まず楽譜はなるべくオリジナルのものを準備します。いわゆる「原典版」という楽譜です。ピアソラの場合、そもそも出版されていないような楽譜が多いので、本人の演奏が「原典版」になります。(以前お話ししたトランスクリプションについては本日は割愛)

 ピアノでいうと「ヘンレ版」という楽譜です。ピアノ学習者で「ヘンレ版」に苦労したという人が多いと思いますが、青っぽくて、灰色っぽい楽譜で、いかにも不健康そうな表紙になっていて見るのも嫌になってしまいます。ちなみに、最近は「ヘンレ版」のアプリもありますが、アイコンはあの青っぽい色で、ポチっとしたくなりません。

 この原典版には作曲者の意図が音符としてしっかりと残されているので、まずはオリジナルをしっかりと読み込みます。ここで、ポイントになってくるのが「フィンガリング(指使い)」ですが、これは編集者や研究者が必要と判断して加筆したものです。これがめっちゃ曲者で、この通りに演奏すると大抵は失敗します。

ヴォイシングの先にあるフィンガリング

 そこで役に立つスキルが「ヴォイシング」と言って、早いパッセージがどのようなランであるのかを見極める能力です。その先に重要になってくるのが「フィンガリング」になるのですが、パッセージの意味を理解すると、フィンガリングが適切になり問題が解決するという事が多くあるように思います。

 つまり、指がバタバタとするのは、理解不足に起因しており、正しいポジショニングを取れない問題へと繋がっていきます。そして、楽譜を理解するのにアナリーゼだけでは不十分で、イメージする力が最も大切になってきます。この辺りが本質的な音楽の問題となって、演奏者が苦労するところではありますが、フィンガリングからパッセージを考えると、イメージがより鮮明になるという経験を重ねることにより、少しずつ近付くことしかないという結論に至ります。

適切なフィンガリングが生み出す美しい音楽

 結論として、美しい音が出せない時は「フィンガリング」に問題があり、理解を深めることによって「フィンガリング」がよくなり、美しい音になるというのが、私の解答です。

 さらに言うと、私が「フィンガリングが汚い」と注意すると言うことは、理解不足だと注意していると言うことです。是非とも、楽曲を理解して適切なフィンガリングで演奏することを願っております。

2023.01.29 監督かじくん

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