「シュクレ」のコンサート直前のレッスンとなりました。直前というのは、最終的な確認作業だけで、すんなりと終わりたいところですが、このユニットに限っては最後の瞬間まで徹底的にクリエーションを心がけています。
機械的な練習の弊害
本番前のメンバーは、個人的にしっかりと練習してくるので、スムーズな練習となると思われがちですが、実際の練習の現場ではそうはいきません。というのも、個人的に機械的に練習するという弊害が直前に表出することが多くあるからです。
特にクレモナのように暗譜でステージに上がる場合は、顕著に反復練習の弊害が出るものですが、「シュクレ!」のように楽譜を見て演奏する形態でも、反復練習をしてきた弊害が起きます。もしかしたら、楽譜を見るからなのかも知れません。
まず、アンドラーシュ・シフのレッスンを見てください。
引用サイト:https://www.medici.tv/en/masterclasses/master-class-schiff
レッスンしているのは、バッハのパルティータ第2番の冒頭、シンフォニアです。シフは、あせる生徒に「考える前に演奏するな」と言っています。
「弾き(吹き)急ぐ演奏」というのは、独奏からオーケストラまで、本当よく見かけます。人前で演奏するということは、平常心ではいられないということかもしれませんね。とっても大切な事をシフは言ってくれています。
「シュクレ」の場合もそうです。ついつい機械的な反復練習をしがち。それでは全くダメ。常に頭を働かせて練習しなければいけません。
「考える前に演奏するな」というのは、今の「シュクレ」にとっては、とっても重要な言葉だと思います。
ということで、「シュクレ」も同様に機械的な反復練習ばかりしてきた人は、やはり急いでしまっています。コンサート直前になれば、機械的な練習をしていない人とのタイム感の差が広がってしまいます。
練習とは、自分の音をよく聞くことです。
しかも、しっかりと考えながら聞かなくてはなりません。自分の出す全ての音を正確に、どうしてこういう音の並びになっているのかを悩みながら演奏する。最終的に、音楽は耳の良い人が勝ち残る世界なんだから、常に自分の音を聞いて考えなければ、ある一定以上に上達することは難しいです。
なので、ただ繰り返しているうちに吹けるようになるとか、盲目的に繰り返すというのは、例えそれが上手くいったとしても、最終的に本人のためにはなりません。
こういった話をすると、すぐに科学的にという言葉で、ボヤけた議論になったり、メンタルの話に変化したりと、おかしな議論になりますが、実はそんなことはどうでもよくて、機械的な練習によって音楽性を犠牲にしていると、私は指摘しているだけです。
では、一体どうすれば良いのか?
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=GQ-NAgDpRVs
ショパンのエチュード作品10-4です。ピアニストはリヒテルという人です。私が最も敬愛する20世紀最大のピアニスト。この人について書かれている本にものっていましたが、正しい練習について簡素に書かれているのでご紹介します。
1)最初から弾き始める
2)弾けないところがなくなるまでそのページを練習し続ける
3)弾けるようになったら次のページに進む
4)終わり
なんということでしょうか!これって、普通に反復練習ということですよね。
さらにリヒテルは、ゆっくりのテンポで練習することは、あまりないとも言っています。(この言葉は額面通りには受け取れませんが…)ただ、ひたすら、反復練習をしているということです。さっきの文章と矛盾しているように思いますが、リヒテルが大切にしているのは、本の中にでも確認できますが、「本当のテンポで!」ということです。
だから、この動画でもわかるように、ショパンの演奏が爆走になるのだと改めて感じるのですが、彼の演奏は非常に音楽的で、本当のテンポだと理解することができます。
つまり、反復練習は演奏できるようになるためのものでしかなく、表現するための練習を犠牲にしてはいけないということです。
楽譜を演奏できるようになるという事と、表現できるようになるという事は、明確に違うということを理解して練習するべきだと私は考えています。
日曜日のコンサートがどのように仕上がるのか、本当に楽しみです。
2023.02.03 監督かじくん
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