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アナログシンセの音、管楽器の音。

監督日誌

月曜日、慌ただしく始まった四人の練習でした。この日は、坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」の練習。

今回のコンサートでプログラムの最後から二番目に演奏する予定の曲です。この曲は、もう何度も演奏もしているし、人の演奏も、それこそ坂本龍一さんによるピアノの演奏も生で聴いています。恐らく、会場にいる皆さんもよく知っていると思うし、非常に馴染みのある曲だと思います。

自分自身の間違いに気づく

僕は、どうしても坂本さんの無機質に、そして静寂に始めるピアノの演奏の印象が強くて、水墨画のように濃淡をはっきりとつけた演奏にしようと考えていました。

練習が始まり、その考えが間違っていたということに気が付いたんです。その原因は、どうしても音にパワーがないからで、その辺りのお話を今回はいたします。

音のパワーって一体なんなのでしょうか?

この作品をはじめて聴いたのは僕がまだ小学生の時だったと記憶しています。アナログシンセの冒頭の三連符からはじまる幻想的で魅惑的な何とも言えない音楽。子どもながら衝撃を受けたのが鮮明に思い出すことができます。

アナログシンセっていい音しますよね。確か、「Prophet-5」という名機で、この曲は作られたと記憶していますが、それを、ピアノのイメージで管楽器のアンサンブルに作り上げている自分の方法論が、間違っていたと気付いた瞬間となりました。音にパワーがないという致命的な問題に直面したという事です。

やっぱり第一印象が何よりも大切

ピアノの楽譜で勉強して、管楽器で演奏するように作り上げる作業って、どうしてもラップトップ上で作り上げることでしかなく、モニター音楽だという事です。それは、それでダメなんじゃないんだけど、この曲のアプローチとしては間違い。

管楽器であってもアナログシンセのように、パワーのある音を目指してサウンドしなければいけないと思うんです。それは、弱奏であっても同様だという事で、実に目から鱗の衝撃的な瞬間でした。

この曲のアイデンティティーについて考えさせられた瞬間でもあり、やっぱり第一印象が一番大切だという事です。

少し変な言い方かもしれないけど…

ピアノにアレンジされた楽譜をもとに管楽器で演奏しちゃうとどうしても無機質というか、やたら尖ったサウンドになるって思うんです。もちろん、パワーが徹底的にたりません。これは、他の作品でも同様で(特に吹奏楽では顕著で)、管楽器のアンサンブルはどうしても、音が分離してしてしまう傾向が強いと思います。それを無理くりな音圧レベルで強奏にするのは簡単ですが…。芸術とは言えませんね。

さらに、管楽器の音は、アナログシンセのように弱奏でのタッチや音色、空間から広がる余韻など、ディテールを再現するのが難しく、多くの演奏家の音は、もはや人間が演奏する意味さえ消滅しているって感じる時があります。(ごめんなさい)

シンセサイザーの音が人間的で暖かみがあり、管楽器の音がデジタル的で無味無臭なものに成り下がっていると、ある意味で面白い現象が多々見られます。これまでのイメージとは真逆な現象です。

こういう言い方する人って、今は少数派かもしれないけど、そのうち、この鋭くてパワーのない音ではダメだというトレンドになれば良いのにって思った瞬間でもありました。

「音の境界線を扱う」

という事で、弱奏におけるブレンド感。音楽用語では「アセンブラージュ」と言いますが、それが大切になってくるポイントです。実際に演奏している感覚としては、すごく原始的な感じで楽器の音をわざと長く聴いてほしいとメンバーには注意しました。当然、周りの音も同様にです。

じっくりと「音の境界線を扱う事」が弱奏には求められるスキルであり、耳を澄まして、自己表現のために音を出すのではなく、聴き手の一人として音と接することが求められていると思います。これがめちゃくちゃ難しくて、簡単ではありません。

やっぱり「ぽんにち」

今回、「戦メリ」では、音楽をもっとインティメートに表現していければと考えております。何処にもセントラライズドしない音楽というのか、全てがローカルな空間を目指したいと考えております。

自分で言っておいて何ですが、わけ分からないですよね?「自己満」って思われるかもしれませんが、一度、僕の自己満の音楽を聴いて欲しいって強く思っています。

今回の「戦メリ」非常に良いものになっております。あえて、シンセも使わず、MIDIも使わず、生楽器だけで表現します。

坂本龍一さんのアイデンティティーをしっかりと継承する。やっぱり僕たちは、どこまで行っても「ぽんにち」ですよねー。

2023年11月22日 監督かじくん

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