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「音楽的な仕上げ」とは?

監督日誌

本番まで三週間を切り、そろそろ最終的な仕上げとなってきています。クレモナが最も大切にしているコンサートが定期公演で、ここで最先端の音楽を表現するということが何よりも大切だと僕たちは考えております。

ジャンルというのは音楽を売るための仕組み

僕はここで「最先端の音楽」という言葉を使いました。

実は、よく聞かれます。「クレモナはどんな音楽を目指しているのですか?」的な質問です。昔の僕なら、「そんなデリケートな話は立ち話で聞くなよ」って、怒っていました。また、それを説明したとして、その人の音楽の理解力を想像するだけで、話せるような内容ではないとも思っていたし、「そんな質問は愚問でしかない」と言うのが以前の僕の反応でした。(別にいいだけど、嫌われたかも知れません)

でも、今は少し違います。

この人は単にジャンルを聞いているだけなんですよね?

ジャンルというのは、音楽を売るための仕組みであって、質問者は、音楽を購入する人であり、演奏者自身とは全く関係ないと思えるようになりました。

だったら、その人が買いそうなジャンルを予想すれば良いだけです。めっちゃ簡単。

その人がジャズが好きそうなら「ジャズっぽいクラシック音楽」っていうようにしてますし、その人がロックが好きなら「ロックンロールなクラシック音楽」と言うようにしています。

それで、相手が意味不明になると、逆に質問して「どんなジャンルが好きですか?」と聞いて、その人好みを答えるようにしています。実に世界平和です。これでチケットが売れたかは別として、無駄な議論にならなくてほっとしています。

しかし、クリエーションにおいて、ジャンルは全く関係ありません。(たぶん…)

また、ジャンルやスタイルといったことを考えすぎるのも、創造においては障害になることが多いです。

ジャンルやスタイルというのもは、一般的に用いられるもので、その音楽を研究したい場合や、その音楽の本質を理解したい場合には、ジャンルやスタイルというのは、正解に近付く障壁になるように思います。

では、音楽の本質とは何でしょうか

まず、音楽監督として考えているのは、譜面というのは、基本的な曲のアイディアを理解することにのみ役に立つものだということです。

つまり、音楽をどのように演奏するのか、と言った最も重要なことに対しての答えはのっていません。さらに、市販の楽譜は基本的なことを知るだけのものでしかないのに、かなり間違っています。それ使って演奏する人もおられますが…。(感心する結果は得られません)

ちなみに、市販の楽譜を使って演奏してギャラもらうのって、お惣菜屋さんで仕入れた肉じゃがを「お袋の味」って言って提供する居酒屋さんみたいなもので、似てはいるけど非なりです。

では、何が大切だと言いますと、演奏している《その瞬間》です。それは、常に大切です。

演奏家は、その瞬間に起きている出来事に集中し、全てを出し切ることに全力を傾けます。そして、それが実現された瞬間、「ああ、この瞬間のために演奏しているんだ」と実感することができます。

これは、大学では教えてくれません。そりゃ、そうです。

もしかしたら起きるかも知れないという事に一生懸命勉強するのは、教育の現場には相応しくないですよね。

また、何とかそれらを学んだとしても、それをいつどのように使えば良いのか、それを理解することも難しいです。

でも、僕たちは《その瞬間》を学ばなければいけません。

一方、僕は音楽監督としては、音楽を科学的に勉強できることだと証明するためにレッスンをしている時もあります。これは、大いなる自己矛盾でもあります。

ただ、感じたように演奏するためには、その感覚を磨き上げなければいけません。そのための科学だというのが僕の持論でもあります。

そして、僕たちは自らの感覚に従うことが最も大切だと理解することができるようになります。もちろん、そのレベルに到達した場合のお話ですが…。

だから、クレモナとしては常に新しいサブジェクトがあり、《その瞬間》のために準備しなければなりません。特に大きなコンサートの直前では、これまで以上の緊張感と集中力を費やして練習することを求められます。

全ては最高の芸術を客席に届けるためです。

お客さまが一番大切?それって本当なの?

演奏が終わってステージから降りた時、「自分は最悪だった」と思ったとしても、その演奏を「最高だった」と言ってくれる人もいます。

逆に、自分では「良い演奏だった」と思っていても、友人から「緊張していたね」と言われたりもします。人の評価なんて所詮は適当だといつも思う瞬間でもあります。

演奏する時は何を考えてするものなの?

では、どのように考えれば良いのかとなるのですが、僕の場合、音楽表現における優先順位は、まずはリズムのことを最初に考えるのが、自分のアイデアに一番近づくことができます。

もちろん、口ずさむことも重要で、それ無しではリズムに集中できません。特に休符でカウントを取るということも大切になってくるし、基本的なソルフェージュも口ずさまなければ生まれてきません。だから、ピッチが最初に注意されることなのかも知れませんね。

でも、音から一度離れて、リズムだけでどうなっているのかを学ぶ必要があります。(この事は、次回以降の公開練習でします)

特に本番の直前は!

ステージの上でしか感じない《その瞬間》を見出してほしい

よく失敗するのを恐れて、パフォーマンスが停滞する人もいるし、不必要に緊張する人もいるけど、それって、「どうなんだろう?」って思います。せっかくのコンサートなんだから、楽しめとは言わなけど、普通にしているのが一番です。完璧な演奏もできないのに、完璧主義者になりたいって、やめた方が良いし、完璧な演奏を誰も求めてはいないことを理解するべきだと思う。

また、ミスを心配するグールドみたいな人もいるけど、本来の仕事、音楽を作り出すことが怠ってしまうので、感心しません。

僕はグレン・グールドが大好きだけど、彼はステージにいる自分がピエロのように感じていたみたいです。でも、僕は客席の熱気というのは演奏の一部になればと思っています。

まずは、特定の日にベストな状態に持っていくことが大切だし、できるだけ良い環境となるように段取りをしなければいけません。そして、最終的にそういったことは気にせず集中する。

また、《その瞬間》に何が起きたのか、記憶に残るような事であっても、集中していたら流れていきまう。むしろそれは良いことで、自分のやっている演奏を固定化させてはダメ。次のコンサートでは、もっと素晴らしい演奏をすれば良いだけです。

今回の定期公演では、最高の《その瞬間》を、客席の皆さまと作り上げたいと願っています。はっきりいって、絶対に他所では感じることのできない【フィール】があって、もし客席で感じることができる人がいたら、どれほど素晴らしいことになるのだろうと思うし、ぜひ、多くの人に感じてほしいと思っています。

そして、その感覚を身につけるために、公開練習を見に来ることを強くお勧めします。

2023年12月6日 監督かじくん

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