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「レア感」を大切にするということ。

監督日誌

二日間の公開練習が終わりました。本番直前に、今回のステージの流れや、創造のイメージがようやく共有することができ、多少ホッとしています。

本日の監督日誌は、本番直前、一人で譜面や自分の出したい音楽と向き合うためのコツについて、そのヒントをお伝えしていきます。

なお、本編で扱っている演奏家はプロフェショナルの人についてであり、アマチュア愛好家さんが、それぞれの技量で楽しまれている音楽に対してのお話ではありません。ご理解ください。ちなみに、私はアマチュア愛好家さんの演奏を批判する事は絶対にしませんし、これからも愛好家さんが楽しく音楽と関わられる事を心から望んでいます。

もう何度も言っているので、よろしくお願いいたします。

和声感のある旋律

まず、これは和音でも、伴奏でも、旋律でも全て同じなんですが、管楽器は単音しかなりません。単音しか出ないからと言って、無機質に演奏していたら、レア感は出ません。

今回の定期公演に向けて「監督日誌」でも、度々言及していますが、音に対してのレア感がめちゃくちゃ重要だと思っています。これって、相当意識しないと分かりにくいのですが、なるべく分かりやすく解説します。

控えめに言ってクソな音楽

管楽器で演奏する大切なポイントとして、単旋律であっても良い演奏は和声感がしっかりとあります。ヘンテコな楽曲や編曲ばかり演奏していると、その良い旋律というのが分かりにくいのかもしれません。

例えば、ダイヤトニックの4和音とか使ってそれらしく旋律を演奏したとしても、メロディに和声感は生まれてきません。

これって、巷に溢れているインディーズ系のアーティストさんなんかでも散見しますが、メロディに和声感がないので、いったい何がしたいのか伝わってこないですよね。こういった音楽が非常に多くなっていることに、僕は危機感を抱いております。

ちなみに、クラシック音楽の世界でも、ジャズでもそうだと思いますが、ダイヤトニックを弾くことはないし、教えることもしないと思うし、そういうコードを弾いたら普通に試験では点数取れません。

もう少しいうと、そういうコードを演奏しても、何も恥ずかしくないナルシストな演奏家は、僕は感心しません。控えめに言って「クソ」ですね。

「お母さんご飯」に慣れすぎた音楽

ちなみ、和声感というのは、日本語で言うところの「助詞」みたいなもので、それがないと、単語だけの文章になります。

つまり、「お母さんご飯」みたいな会話と同じレベルなことを演奏行為でしているという事です。子どもだったら、「お母さんはご飯じゃありません。」って、叱れることもできますし、「お母さん、ご飯はまだですか?」と教えることもできます。でも、大人になって「和声感が必要だ」と何度言っても、これがなかなか伝わりません。

もしかしたら、そういう助詞のない言語(音楽)に、馴染みすぎたのではと心配になります。

また、旋律だけでなく、リズムや伸ばしの音でも同様です。常に、和声感を感じる演奏をしなければいけないし、自分の出す音(音楽)が、どのようにお客さまに届いているのか、疑って聴くという行為が大切だということです。

でたらめな演奏は芸術とは言わない

逆に、プロの演奏において、楽譜に書かれている音だろうが、アドリブの場面だろうが、単旋律であっても、演奏行為というのは、すべてハーモニーを醸し出すことを目的としているので、和声感のない音楽は基本的に成立しません。

具体的に説明すると、演奏家中には、和声に合わせたスケールを使用して、ダウンビートにコードトーンがなる必要性を理解してない人がいるという事です。

どうしてエンクロージャーを使ったり、アプローチノートを使うのか、その理由をもう一度、和声を感じながら考えてみた方が良いですね。

その上で、それらを理解した上で自由に演奏することができればと思います。決して、デタラメな演奏を芸術の世界では自由とは言いません。

伝統の中に受け継がれたリック

クラシック音楽では、100年以上前に作られたリックを今でも普通に毎日使用して演奏します。ジャズでもチャーリー・パーカーを勉強したりしますが、そこに音楽的な理由があるということを認識して欲しいって思うんです。

よく「音楽は自由だ」と本気で言っている人もいますが、何も勉強していないから言える言葉であって、自由に音楽ができるようになるために、しっかりと勉強をして、さらに練習を積み上げていくのが大切だと僕は考えています。

演奏する姿が見えてくる音楽

次に、和声感が生まれると、レア感のある演奏になります。これって、録音や配信であっても同様なんですが、しっかりと聴衆に伝わります。そして、そのレア感が伝わる演奏が最も大切だと思うんです。

素晴らしいレコードを聴いた時でも同様なんですが、実際に演奏している人の姿が見える時ってあるじゃないですか?

和声感が生まれて、レア感ある演奏になると、録音であっても立って演奏している人の姿が見えてきます。本当に「生演奏」だって感じる瞬間でもあります。

それが、今の演奏者からは感じることが少なくなってきました。あれだけ努力をして、最高のテクニックがある人なのに、レア感のない演奏しているばかりに、何も伝わってこない、いったい何がしたいのかわからない、残念な演奏に出会うこともしばしば。

なので、キャリアの浅い段階で、自分の演奏のレア感のなさに気が付く必要があると思うし、身に付けなければいけない必要なスキルだというのが僕の見解です。

という事で、今回の定期公演では、この「レア感」にこだわって作り上げてみました。

客席で目を閉じて聴いていただいても分かると思いますが、その現場には存在しない音がスピーカーから流れています。その環境音が何処から聞こえてくるのか、探してみてください。

絶対に他のコンサートでは味わえない、「レア感」のあるサウンドがクレモナのコンサートの魅力の一つだと思います。どうぞ、楽しみにしていてください。

2023年12月16日 監督かじくん

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